蓄電池の最適化
Tensor Cloudは、蓄電池エネルギー貯蔵システム(BESS)を完全自動で、所有者にとって経済的に最適な形でディスパッチします。市場価格・太陽光発電予測から実際のBESS制御までをカバーします。
蓄電池はスポット市場と需給調整市場をまたいで最適化され、時間前市場への対応も予定しています。最適化では、FIPプレミアム、サイクルコスト設定、充電状態(SoC)の上下限、系統の損失などの経済的・技術的制約を考慮するため、BESSが扱える各kWhの電力は、システム所有者にとって最も収益の高い用途に使われます。
対応する蓄電池構成
系統用蓄電池と、太陽光発電所に併設された蓄電池に対応しています。Tensor Cloudの自動ディスパッチは、AC連系およびDC連系のいずれの構成の併設型BESSも最適化します。オンサイトの需要は太陽光発電量とのみ相殺され、太陽光発電量を上回る需要を蓄電池でまかなう計画は作成しません。
日本の需給調整市場では、Tensor Cloudは系統用蓄電池、併設型蓄電池、および数千台の個別蓄電池を含み得るアグリゲートされた仮想発電所(VPP)型の電源等を最適化します。
対応する市場
1日48個の30分コマそれぞれで、蓄電池の容量は卸電力市場でエネルギーとして販売することも、需給調整市場で応札することもできます。最適化は現在、以下の市場に対応しています。
- JEPXスポット市場
- EPRX一次調整力(オフライン)
同じコマの中で、蓄電池の容量をエネルギー販売と一次調整力の応札に振り分けることもできます。ただし、両方を履行できるだけの出力の余裕とSoCが残っている場合に限ります。太陽光発電を含む電源等は、太陽光発電が予測されないコマでのみ一次調整力に応札します。
3つ目の市場として、JEPX時間前市場をリリースする予定です。
最適化のインプット
最適化では、ワークスペース内の各エリアにある、需給管理機能が有効な全てのプロジェクトを計画します(FITのプロジェクトは除く)。HiGHSソルバーで解く混合整数線形最適化モデルで、インプットは以下のとおりです。
- 各蓄電池の現在の状態(例えば、SoC、エラー/メンテナンス状態)と、容量、効率、SoCの上下限、サイクルコスト、系統充電の可否などの設定
- 計画停止や停止のイベント(対象設備を計画から外します)
- エリアの電力価格予測(インバランス価格の代わりにも使用)
- EPRXの一次調整力の最適な入札価格(入札価格を参照)
- 一次調整力の落札と、それに対して提出済みの基準値
- 各プロジェクトの太陽光発電予測と需要予測
- 各プロジェクトのFIPプレミアム
- ワークスペースに設定されたインバランス価値
- 蓄電池の自己消費(蓄電池自身のテレメトリーと外気温から推定)
- 系統充電で購入する量を増やす託送の損失率
- DC結合のプロジェクトでは、サイトパワコンの効率
- JEPXで約定済みのスポット市場の量。10:00のゲートクローズ後は、入札のないコマはゼロの計画とみなされるため、そのコマでの受送電はインバランスになります。
蓄電池の制約
- SoC:SoCの下限と一次調整力の落札のために確保する充電量は、大きなペナルティ付きのソフト制約です。そのため、実行可能な代替案がない場合にのみ計画がこれらを下回ります。一次調整力のための確保量は、落札のキャンセルに必要な3コマにわたる最悪ケースの応動(落札1 kWあたり最大0.31 kWh)に、1 kWあたり0.05 kWhのマージンを加えたものです。蓄電池のSoCがすでに上限を超えている場合は、その値が上限になります。
- サイクルコスト:サイクルコストは充電した1 kWhごとに課され、計画期間の終わりに蓄電池に残る電力量は同じ単価で評価されます。Tensor Energyの技術チームが自動サイクルコストを設定した蓄電池では、毎週の計算により、入力値が蓄電池の劣化状態(SoH)から算出したコストに置き換えられます。
- FIP:FIPプレミアムは、スポット価格が下限の0.01円/kWhを上回るコマでのみ計上されます。系統から購入した電力は放電してもプレミアムを得られないため、系統充電にはFIPプレミアム分のコストが計上されます。プレミアムは計画期間の開始時点の単価を使用します。
デューデリジェンスのために蓄電池最適化の数学的・論理的基礎の詳細が必要な場合は、お問い合わせください。
運用フロー
蓄電池とアグリゲーションの日々の運用は、ほぼ完全に自動化されています。運用は卸電力オークション前、需給調整オークション前、当日運用の3つのフェーズに分かれます。
フェーズ1:卸電力オークション前
時刻nのコマについて、このフェーズはコマが初めて計画に含まれた時点で始まり、n-1日の10:00に終了します。毎日7:20の実行では14日先まで計画するため、コマは最大14日前から計画に含まれます。それ以外の実行は、当日の残りと翌日以降3日間を対象とします。
計画は30分毎に実行され、前回の計画以降にインプットが変化したエリアを再計画します。対象となる変化は、JEPXの価格予測、EPRXの最適な入札価格、太陽光発電予測、一次調整力の落札、JEPXの約定結果、プロジェクト設定、サイトの停止データ(例:計画停止や予定外停止)、計画から乖離した蓄電池のSoCです。さらに、全てのエリアは少なくとも6時間毎、計画の先端が48時間を切った時点、JEPXスポット市場のゲートクローズ後に1回、EPRXの応札締切前の1時間以内に再計画されます。FIPプレミアムやインバランス価値の変更は、次回の再計画で反映されます。
Tensor Cloudは30分毎に、最新の48時間分の卸電力ディスパッチスケジュールもEMSに送信します。EMSはこれをローカルに保存し、それに従って蓄電池を制御します。予備として、週に3回(月曜日、水曜日、金曜日)1年分のスケジュールも送信するため、卸電力・需給調整市場の取引結果が出る前でも、EMSには常に少なくとも1つのディスパッチ計画があります。
最適化は、ワークスペースのバランシンググループのうち同じエリアにある全てのプロジェクトを、1つのインバランスのまとまりとして計画します。そのため蓄電池は、同じワークスペースの別のバランシンググループに属するものも含め、同じエリアにある太陽光発電のみのプロジェクトの経済的成果も改善します。
需給調整市場の応札ウィンドウが開くのはn-1日の11:30ですが、ディスパッチ計画は卸電力市場の入札を生成する時点で、期待される需給調整市場の落札をすでに考慮しています。
n-1日の8:01に、JEPX自動入札が有効なエリアについて、Tensor CloudはJEPXスポット市場の翌日の各コマに売り入札を行い、系統から充電する蓄電池については買い入札も行います。入札量は最新のBESSディスパッチ計画と同一エリア内の非蓄電池プロジェクトの発電計画に基づき、入札は市場価格で約定する指値価格で行われます。10:00の前日オークション締切をもってフェーズ1が終了します。
フェーズ2:需給調整オークション前
フェーズ2は、スポット市場のオークションが終了し、その価格と結果がn-1日10:15頃に公表された時点で始まります。JEPXの結果公表後の最初の最適化の実行で、コマごとの卸電力販売量に基づいて、一次調整力の応札に回す蓄電池容量を再配分します。想定より販売量が少なかった場合、一次調整力の応札に使える容量は増えます。
一次調整力の応札ウィンドウはn-1日11:30に開きます。その1分後に、Tensor Cloudは電源等の制約(例:各需給調整商品ごとの電源等容量)とディスパッチ計画上の利用可能容量に基づいて、全ての電源等について応札します。13:58までは、最適化が実行されるたびに既存の応札を取り消して新しい応札を行い、それ以降は応札を変更しません。応札ウィンドウは14:00に締め切られます。
応札はEPRX自動応札がオンのワークスペースについてのみ行い、計画停止と重なるコマは除外します。また、新しい計画にある電源等の応札が含まれなくなった場合は、既存の応札を取り下げます。自動応札がオフの間は、応札も取り下げも行いません。
ディスパッチ計画はフェーズ1と同じロジックで更新されますが、スポット市場の約定結果からの逸脱はインバランスとなるため、最適化はそのコストを考慮します。計画がインバランスをどう扱うかは、ワークスペース設定のインバランス価値で制御できます。
フェーズ2は、n-1日14:00にEPRXの応札ウィンドウが締め切られた時点で終了します。
フェーズ3:当日運用
EPRXは毎日14:00~15:00の間に一次調整力のオークション結果を公表します。落札情報が得られ次第、Tensor Cloudは落札した各電源等に紐づく全ての物理蓄電池のディスパッチスケジュールを作成し、各EMSへ送信します。
n-1日17:00にOCCTOの当日計画の受付が始まると、Tensor Cloudは17:01から対象バランシンググループの発電計画を更新し、その後も一次調整力の落札や落札のキャンセルがあるたびに更新します。最新の受理済み発電計画を基に、落札コマの発電上限を引き上げ、当日計画としてOCCTOに再提出します。販売計画と需要調達計画は変更しません。また、電源等の種類に応じて、EPRXが求める基準値計画なども作成し、計画が更新されるたびに、受渡日の最初の落札コマの1時間前までEPRXのAPI経由で提出します。
当日運用フェーズ中も、最適化はディスパッチ計画を更新し続けます。一次調整力の落札はハード制約で、変化するのは基準値と落札コマ以外の充放電のみです。これらはインバランス価値とサイクルコスト設定に基づいて決まります。
一次調整力落札のキャンセル(代替不可申請)
Tensor Cloudは、1時間前のゲートクローズより前にまだキャンセルできる直近の落札コマ(約65分先)について、対象電源等が一次調整力の契約義務を履行できなくなるリスクを評価します。
- 1分毎に受信中のテレメトリーを確認します。蓄電池のテレメトリーが途絶えた場合、その落札はリスクありと判断します。
- 1時間に2回、上げ方向の落札について、コマまでに計画されている充電を含めた蓄電池のSoCが、想定される一次調整力の応動をまかなえるかを確認します。
義務の履行が困難であると判断された場合、Tensor Cloudは一般送配電事業者(TSO)の標準的な手続き(代替不可申請/様式23)に従って自動的に落札をキャンセルします。
- 該当コマについて、EPRXのAPIへ電源等の差替申請を送信
- TSOが差替を確認した後、TSOへ通知メールを送信(様式23メール)
- 九州エリアでは、TSOの運用窓口へ自動電話で差替も通知
- OCCTOの発電計画を更新
- 電源等の種類に応じて必要な基準値計画やその他の計画を更新
- キャンセルしたコマについて、一次調整力の容量を0としたスケジュールをEMSへ送信
SoC不足によるキャンセルの範囲は、蓄電池が系統から充電できるかどうかで異なります。
- 系統から充電できる蓄電池は、ローリングウィンドウでコマごとにキャンセルします。
- 系統から充電できない蓄電池は、リスクのあるコマから次の日の出の90分後(太陽光発電で再び充電できる時刻)までの全ての落札をキャンセルします。
テレメトリーの途絶時は、その電源等の残り全ての落札をキャンセルします。キャンセルは受渡日ごとに1つのバッチにまとめられるため、夜0時をまたぐキャンセルウィンドウは2つの別々のバッチに分かれ、TSOには日ごとに1回ずつ通知が送られます。
現地機器との統合
Tensor Cloudは、現地に設置されたEMS(エネルギーマネジメントシステム)を通じて、蓄電池、太陽光発電システム、需要家設備などからテレメトリーデータを収集し、蓄電池へ制御信号を送信します。複数のパートナー企業との統合実績がありますが、特定のEMSには依存せず、必要なデータの提供と制御信号の受信ができるEMSであれば連携できます。統合についてはお問い合わせください。
蓄電池最適化に関するよくある質問
Q: Tensor Cloudではどの市場で取引できますか?
A: JEPXスポット市場と、需給調整市場の一次調整力(オフライン)に対応しています。時間前市場への対応も予定しています。
Q: 系統用蓄電池にも対応していますか?
A: はい、系統用蓄電池に対応しています。
Q: 併設型蓄電池からどれくらいの収益改善が得られますか?
A: プロジェクトで得られるFIPプレミアム、蓄電池のCAPEX、太陽光の発電プロファイルなど、いくつかの要因によって異なります。実際の顧客のユースケースの分析では、条件の良いケースでは年間収益が40%以上増加することが期待できます。
まずFIP計算ツールで、期待できるFIPプレミアムの大まかな見積もりを確認してください。その後、Tensor Cloudでワークスペースを作成し、デューデリジェンスのためにプロジェクトの詳細な技術経済シミュレーションを実行できます。
Q: 初期面談から稼働開始までどれくらいの時間がかかりますか?
A: 蓄電池プロジェクトの成熟度によって異なりますが、初期面談から稼働開始までは通常3〜6ヶ月です。主なボトルネックはTensor Cloudとの接続ではなく、蓄電池システムの納期、許認可、系統連系のプロセスです。
関連情報
- 蓄電池アグリゲーションサービス: 最適化した蓄電池を電力市場で運用する方法を確認できます。
- 蓄電池の最適制御に関する研究記事: 制御方針の背景を解説しています。
- 一次調整力向けのネガワット・ポジワット運用に関する研究記事: 蓄電池を一次調整力に活用する際の論点を確認できます。