太陽光発電シミュレーション
背景
シミュレーションでは、プロジェクトの将来の太陽光発電量を予測する必要があります。これらのプロジェクトはまだ存在しないため、機械学習モデルの学習に使える過去のデータがありません。 そこで、プロジェクトの特性と気象データを入力として発電量をシミュレーションする、物理的な太陽光発電シミュレーションモデルを使用しています。
プロジェクトの特性には、場所と標高、DC容量、パワコンの容量と効率、パネルの傾斜角と方位角、モジュールの温度係数、損失の設定が含まれます。発電所は、傾斜角と方位角が1つのアレイが1台のパワコンにつながる構成としてモデル化します。そのうえで、気象モデルの気象データからパネルの発電量を計算します。
方法論
もともと米国サンディア国立研究所で開発された技術を使用しています。当社の技術は、実際のデータで広範囲にテストおよび検証されています。
シミュレーションは、この研究から生まれたオープンソースのライブラリpvlibを基盤とし、次のモデルを組み合わせています。
- DC出力: PVWatts DCモデル。DC容量をパネル面の日射量に応じて換算し、モジュールの温度係数で補正します
- 斜面日射量への変換: Hay-Daviesモデル。水平面の日射量を傾斜したパネル面の日射量に変換します
- 反射: 物理的な入射角モデル。スペクトル補正は適用しません
- セル温度: 架台設置のガラス・ガラスモジュール向けのサンディア(SAPM)モデル。実際の設置方式にかかわらず、全てのプロジェクトに適用します
気象変数
物理シミュレーションには、次の気象変数を使用します。
| 変数 | 単位 | 時間解像度 |
|---|---|---|
| 地上2 mの気温 | °C | 1時間 |
| 風速 | m/s | 1時間 |
| 全天日射量(GHI) | W/m2 | 1時間 |
| 散乱日射量(DHI) | W/m2 | 1時間 |
| 法線面直達日射量(DNI) | W/m2 | 1時間 |
遠方の遮光効果
太陽光発電シミュレーションは、丘や山などの遠方の地形による遮光を考慮します。プロジェクトの作成時または所在地の変更時に、Tensor Cloudはその地点の地平線プロファイルをPVGISから取得します。太陽がこの地平線より低い時間帯は直達日射量をゼロとし、散乱日射量はそのまま使用します。
地平線プロファイルを取得できなかった場合(PVGISが海上の地点とみなす場合など)は、遠方の遮光を考慮せずにシミュレーションします。近くの物体による遮光は、影損失の設定で考慮します。
損失と経年劣化
プロジェクトの損失の設定は、DC出力に対して適用します。対象は汚れ損失、影損失、積雪損失、ミスマッチ損失、DCケーブル損失、接続損失、光誘起劣化(LID)、銘板定格損失、稼働率損失、年間劣化率による劣化です。各損失は乗算で組み合わせるため、合計は加算ではなく複合されます。
劣化による損失は、年間の劣化率に発電所の経過年数を掛けたものです。経過年数はCODでのゼロからシミュレーション期間にわたって均等に増え、最終時点では最初と最後のシミュレーション年の差(年数)になります。劣化開始月と劣化変化頻度により、劣化の開始を遅らせ、連続的、月単位、年単位のいずれで変化するかを設定します。
パワコン効率
パワコンの効率は出力レベルによって変わります。定格出力付近で定格効率に達し、DC入力が下がるにつれて効率も下がります。これは日の出時、日没時、厚い雲の下で起こります。起動しきい値を下回ると、AC出力はまったく発生しません。
当社はこの挙動をNREL PVWattsパワコンモデルで表現しています。このモデルは、効率 を負荷率 (DC入力電力とパワコンのDC入力上限の比)の関数として表します。
はプロジェクトに設定する太陽光パワコン効率です。 は固定の基準定数であり、AC出力はパワコンのAC容量で上限が設けられます。
AC/DC変換ロスがゼロにならない理由
設定した効率はこの曲線を拡大縮小しますが、曲線の形状は変えません。そのため、部分負荷時の相対的な効率低下は、どの値を入力しても同じです。
| 負荷率 ζ | 設定値に対する相対効率 |
|---|---|
| 100% | 100.0% |
| 60% | 100.3% |
| 30% | 99.7% |
| 10% | 96.0% |
| 5% | 90.0% |
| 2% | 71.6% |
| 1% | 41.1% |
| 0.6% | 0.2% |
| 0.6%未満 | 0% |
したがって、効率を100%に設定すると、ロスのないパワコンではなく、定格負荷時に効率100%で、それ以外では同じ効率低下をたどるパワコンになります。晴天時間帯のロスはほぼゼロですが、各日の朝夕の低日射時間帯がわずかにロスを生み、太陽光ロスチャートのAC/DC変換の項目はわずかにゼロを上回ります。
この残差の大きさは、システムが部分負荷で稼働する時間の長さに依存し、これはDC/AC比によって決まります。効率を100%に設定した場合、通常はDC発電量の0.1%から0.5%の範囲に収まります。過積載率の高いシステムほど発電時間の多くを定格負荷付近で過ごすため、残差は小さくなります。
そのため、プロジェクトで実際に達成される年間の変換効率は、設定した値を常にわずかに下回ります。
1時間ごとのシミュレーションと30分値
気象データの各1時間は、その中間時刻でシミュレーションします。これにより、太陽の位置が日射量の表す時間帯と一致します。気温と風速は時点の観測値であるため、中間時刻の値は前後の観測値の平均とします。
1時間ごとの結果は、時間の区切りをまたぐ累積発電量に沿って2つの30分に分割します。パワコンモデルは30分ごとに改めて適用するため、出力のクリッピングは30分単位で判定されます。日の出または日の入りを含む時間帯では、太陽が出ている30分にのみ発電量を割り当てます。
カスタム発電量
プロジェクトでカスタム発電プロファイルを使用する場合、シミュレーションした発電量を、入力した月ごとの総発電量に合うように補正します。2年目以降は劣化を反映します。各月内の30分ごとの発電の形は、引き続きシミュレーションで決まります。これらのプロジェクトでは確度レベルを計算しません。
確度レベル
全てのシミュレーションはP50の結果を出力します。P50は中央の推定値で、実際の発電量がこれを上回る確率と下回る確率は等しくなります。シミュレーションによる発電プロファイルを使用する太陽光発電所では、P85、P90、P99の結果も出力します。これらは、それぞれ85%、90%、99%の確率で上回ると見込まれる発電量です。シミュレーション結果の確度レベルの切り替えで、表示する水準を選べます。
年変動
年間発電量が気象によってどの程度変動するかを測るため、その地点の直近20暦年分の実際の気象で、劣化をゼロとして発電所をシミュレーションします。年変動 は、この20年分の年間AC発電量の標準偏差を平均で割った値です。
20年の期間は暦年が変わるたびに1年進むため、新しい年にシミュレーションを再実行すると、確度レベルの値がわずかに変わる場合があります。
不確実性の合成
年変動は、モデルの不確実性とシミュレーションの不確実性に対する固定値と合成します。これらはP90の偏差(3.5%と5%)として定め、1標準偏差に換算します。
P50の結果の換算
各確度レベルでは、30分ごとのP50のAC発電量とDC発電量に同じ係数を掛けます。
| 確度レベル | |
|---|---|
| P85 | 1.036 |
| P90 | 1.282 |
| P99 | 2.326 |
換算後の発電量で、出力抑制、市場取引、蓄電池の運用、費用を改めてシミュレーションするため、確度レベルごとに個別の財務結果が得られます。太陽光発電のロスの内訳はP50についてのみ計算します。
関連情報
- Tensor Cloudの太陽光発電シミュレーション: 発電量の推定結果をプロジェクトの収益性評価に利用できます。
- 日本の太陽光発電の成長に関する研究記事: 国内の導入動向を確認できます。
- FIP制度と太陽光・蓄電池の組み合わせ: 発電量と蓄電池がFIP収益に与える影響を考えるための背景です。