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気象モデル

背景​

気象は電力の需要と供給の両方に影響します。太陽光発電所と風力発電所の出力を左右し、電力消費も変化させます。価格は需給で決まるため、気象は電力市場の価格に大きく影響します。

当社は、現実的な将来の気象データを作成する、統一されたグローバル気象モデルを開発しました。地点と期間を指定すると、Tensor気象モデルは2095年末までの気象データを作成します。シミュレーションの開始は2040年より前である必要があります。

気象モデルは過去の気象データを将来に投影するため、シミュレーション上の将来の各時点は過去の特定の時点に対応します。たとえば、2030年4月1日の将来の気象は、2014年4月1日に記録された気象です。

同じ理由で、この気象モデルは意味のある短期予測を提供できません。スーパーコンピューターを必要とする地球規模の気象システムの物理シミュレーションでも、Google GraphCastのようなディープラーニングによる気象予測モデルでもありません。

はじめにで説明したように、Tensor Cloudのシミュレーションエンジンは、将来の気象データを次のインプットとして使用します。

  • 太陽光発電および蓄電池プロジェクトのシミュレーション
  • 電力価格のフォワードカーブの作成
  • 出力抑制シミュレーション

開発目標​

Tensor気象モデルの主な目標は、銀行融資可能性(バンカビリティ)でした。そのために、再生可能エネルギーや蓄電池のプロジェクトが銀行融資の対象となるための前提条件と考える、説明可能性、統計的正確性、内部整合性の3点を重視しました。

説明可能性​

以下の計算ロジックに従えば、将来の気象の各年を過去の特定の年までたどれます。全てのシミュレーション結果のデータ系統をたどれるように、(TMYアプローチなどで)気象を合成的に生成しない方針を選びました。

統計的正確性​

長期間で見ると、この方法は同じ年を繰り返すだけの方法より正確です。過去数十年分の気象実績をつなげた連続した時系列は、過去の気象のランダム性をそのまま保つため、プロジェクトのデジタルツインも、現実と同じように極端な暑さや大雨にさらされます。

一方で、短い期間ではトレードオフがあります。数年単位ではより正確ですが、アセットマネージャーが実際の発電所の実績とシミュレーション結果を月単位で比較する場合には問題になることがあります。

TMY(標準気象年)アプローチを使用すると、月単位で見たときにより均質な結果が得られます。Tensor気象モデルに加えてTMY気象の利用に関心がある場合は、お問い合わせください。

内部整合性​

将来のプロジェクトをシミュレーションするには、日本の任意の地点の将来の気象データが必要で、地点間のデータは互いに整合している必要があります。同じゾーンのプロジェクトは似た気象を経験し、全てのプロジェクトが気象と正しく相関した同じ価格を経験しなければなりません。そのため、過去の気象データを将来に再インデックスして使用します。

シミュレーションでは、プロジェクトの所在地の気象から太陽光発電量を推定し、特定の基準地点の気象を価格生成モデルのインプットとして使用します。そのため、各発電所の太陽光発電量と、その発電所が受け取る価格は相関します。

例

九州の晴れた日には、発電所は多くの電力を発電しますが、他の多くの発電所も同様に発電するため、価格はゼロまで下がります。この相関がなければ、発電所がピーク出力でも収益を得ていないことをシミュレーションで示せません。

気候変動​

Tensor気象モデルは過去の気象を繰り返すため、現時点では気候変動の影響を考慮していません。調査チームは、気温の上昇やより極端な気象イベントを含む長期的なIPCCシナリオを気象モデルに組み込む方法を検討しています。

Tensor Cloudは気候リスク管理プラットフォームではなく、長期の気候予測は不確実性が大きいため、再生可能エネルギー業界の一般的な慣行に従い、プロジェクトのシミュレーションモデルには気候変動を含めていません。

計算ロジック​

実績データと過去データの境界​

「過去」(実際に記録された気象データ)と「将来」(マッピングされた過去の気象データ)の境界は固定されていません。既に利用可能な記録済みの気象データのみを使用するため、シミュレーション実行日の5日前(日本時間の0時)に設定されます。この境界より前は実際に記録された気象データを使用し、境界より後は以下の計算式でマッピングした過去の気象データを使用します。

過去の時間​

過去の時間(CODが過去にあるプロジェクトの、現在までの期間)については、プロジェクトの所在地の実際の気象データを使用します。

将来の時間​

将来の日付については、過去の気象実績をその日付にマッピングします。年内の同じ時期の過去の気象を取り出し、将来の日付に再インデックスします。過去の各年YYに、次の式で定義する新しい年Y′Y'を割り当てます。

Y′=Y+(252−⌊Y8⌋)⋅16Y' = Y + (252 - \left \lfloor \frac{Y}{8} \right \rfloor) \cdot 16

これにより、2095年までの任意の年に意味のある日付が得られ、近い将来ほど近い過去の気象でシミュレーションされます。2096年以降は、再解析データが存在しない1940年より前の年に対応してしまいます。

将来の年は、プロジェクトのCODではなく暦に沿った8年ごとのブロックでマッピングします。各ブロックは8で割り切れる年(2032年、2040年など)の1月1日で終わります。連続するブロックは1日重なり、各時刻で最初に得られる観測値を使用します。

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情報

このマッピングにより、将来の期間は過去の次の期間に対応します。

2024〜2031年の期間-> 2008〜2015年にマッピング
2032〜2039年の期間-> 2000〜2007年にマッピング
2040〜2047年の期間-> 1992〜1999年にマッピング

将来の期間は、2016年以降の気象にはマッピングしません。価格モデルは近年のデータで学習しているため、学習に使った気象が将来価格のインプットに含まれないようにしています。近年の気象は、実績の期間と確度レベルの計算には使用します。

データソース​

過去の気象データは、Open-Meteoの過去気象アーカイブを通じて、いくつかのデータセットから取得します。地点ごとにこれらのデータセットを組み合わせ、最も正確な過去の気象条件を得ます。

ERA5-Landから取得するのは気温のみで、日射量と風速はERA5とECMWF IFSから取得します。将来の期間は2016年より前の年にマッピングするため、将来の日射量は全て解像度0.25°のERA5に基づきます。2017年以降のデータがあるECMWF IFSは、実績の期間にのみ影響します。

気象データが1時間欠けている場合は、前後の値から補完します。それより長い欠損が残る場合は、発電量が欠けた結果を出力せず、シミュレーションはエラーで停止します。

データセット空間解像度時間解像度データの可用性更新頻度
ECMWF IFS9 km1時間2017年から現在まで毎日、2日遅れ
ERA50.25° (~25 km)1時間1940年から現在まで毎日、5日遅れ
ERA5-Land0.1° (~11 km)1時間1950年から現在まで毎日、5日遅れ

シミュレーションの再実行​

シミュレーションの再実行で結果が異なる理由​

異なる日にシミュレーションを再実行すると、実績データと過去データの境界が移動します。例えば、3月31日に実行したシミュレーションでは3月26日以降が「将来」として扱われますが、4月10日に実行した場合は4月5日以降が「将来」となります。これら2つの境界の間の約10日間について:

  • 3月31日の実行では、16年前の同日の気象データを使用
  • 4月10日の実行では、その時点で利用可能になっていた2026年の実際の気象データを使用

そのため、この期間の日射量と気温がわずかに異なり、シミュレーション上の発電量もわずかに異なります。

初年度以降にも差が生じる理由​

気象データそのものが変わるのは、2つの境界の間だけです。8年ごとのブロックは暦に固定されているため、実行日によって実績データの終わる位置は変わりますが、ブロックの終わる位置は変わらず、後の境界以降の気象データは両方の実行で同じです。

それでも、出力抑制により後の年の結果がわずかに変わることがあります。各年度の出力抑制イベントは、プロジェクトの所在地で決まる1つの乱数列から順に抽出します。変わった期間の発電量によってその年度に抽出するイベントの数が変わると、翌年度以降に抽出するイベントも変わる場合があります。

また、年変動は直近20年分で計算するため、新しい暦年にシミュレーションを再実行すると確度レベルの値が変わる場合があります。

関連情報​