財務シミュレーション
背景
シミュレーターは、シミュレーションした発電量と市場の予想価格から、プロジェクトの財務結果を計算します。全体的な財務実績は、次の4つで構成されます。
- 取引シミュレーション
- PPAのあるプロジェクトのPPA決済の計算
- 費用(CAPEXとOPEX)の計算
- 収益の計算
計算ロジック
取引シミュレーション
シミュレーターは、スポット市場と調整力市場の両方への参加をモデル化します。
スポット市場への参加
完全な予測に基づいて毎日入札を生成します。つまり、入札量はシミュレーションした発電量と一致します。蓄電池を搭載したプロジェクトの場合、この入札は蓄電池シミュレーションの結果にも依存します。
入札量が発電量と一致するため、シミュレーションではインバランスが発生せず、インバランスのキャッシュフローも計算しません。インバランス費用を結果に含めるには、インバランス費用の勘定項目でOPEX項目として追加してください(費用計算を参照)。
調整力市場への参加
蓄電池を搭載したプロジェクトの場合、シミュレーターは調整力市場の一次調整力(オフライン枠)への参加もモデル化します。これにより、蓄電池が周波数調整で得られる追加の収益がわかります。
対象プロジェクト
蓄電池を搭載したプロジェクトは、プロジェクトの対象市場に調整力市場が含まれている限り、蓄電池容量に関係なく調整力市場シミュレーションに参加できます。
実際には、個別のプロジェクトが市場に参加するには、最低1MWの容量が必要です。容量の小さいプロジェクトは、合計容量が1MW以上になるように集約された場合にのみ参加できます。現在の実装を簡素化するために、蓄電池を搭載したすべてのプロジェクトが参加資格があるものとして扱われます。
以下の期間は調整力市場への参加から除外されます:
- FIT(固定価格買取制度)の適用期間中
- オフサイトPPAの契約期間中
- 蓄電池の運転期間外
- 2024年4月(シミュレーションにおける市場の開始時点)より前
取引期間
AC結合の蓄電池の場合、調整力市場への参加は太陽光発電のない30分コマであれば可能です。DC結合の蓄電池はサイトのパワコンの背後にあるため、太陽光発電のあるコマでも参加できます(蓄電池の結合方式を参照)。また、出力抑制指令により蓄電池の充放電容量が調整力のコミットメントを履行するのに不足する場合、そのコマは除外されます。
入札計算
シミュレーターは、各30分コマについて、12時間先までを考慮しながら、可能な蓄電池運用の期待収益を比較し、最も収益性の高いものを選択します:
- スポット市場への放電:蓄電池からスポット市場へ放電します。
- 調整力:蓄電池の容量を調整力市場にコミットします。
- 調整力+系統充電:容量を調整力市場にコミットしながら、系統から蓄電池を充電します。
- 待機:何もしません。
調整力の入札量は蓄電池の定格出力の全量です(DC結合の蓄電池の場合は、サイトパワコンの効率で減額されます)。調整力+系統充電の場合、入札量は蓄電池の出力に系統充電の電力を加えた値です。
各選択肢を比較する際、シミュレーターは両方の調整力の選択肢の収益から想定される発動分の蓄電池サイクルコストを差し引き、調整力+系統充電の収益からは系統電力の購入費用も差し引きます。
運用上の仮定
- 調整力をコミットした各30分コマでは、想定される発動を反映して、コミット容量1kWあたり正味0.0525kWhを放電すると仮定されます。この電力量は後のコマで再充電されます。
- 提出されたすべての入札は約定する(市場に受け入れられる)と仮定されます。
収益計算
調整力市場の収益は容量報酬に基づいて計算されます。
- シナリオの仮定の一部として、エリアごとに30分コマあたりのΔkW価格(円/kW)を入力できます。他のシナリオパラメーターと同様に、値は日本の会計年度の開始時点を基準とし、指定した年の間は内挿されます。
- シミュレーターは、各30分コマについて、ΔkW価格にコミット容量を掛けて報酬を計算します。
- 調整力運用中に放電された電力量はスポット市場の売電量から差し引かれ、それ自体は収益を生みません。
- 決済は、取引と同じ月内に発生すると仮定されます。
モデルは、実際の周波数応動の発動による報酬を考慮していません。
取引手数料
取引手数料はEPRXが毎年設定し、約定容量1kW・30分コマあたりの円で計算されます(2024年度0.01円/kW、2025年度0.03円/kW、2026年度0.06円/kW)。将来の年度については最新の公表手数料が変わらないと仮定し、参加手数料の合計をシミュレーション結果に費用として計上します。最新の手数料はEPRXの手数料のページを参照してください。
簡素化のため、現在の実装はスポット市場と調整力市場のみを対象としています。時間前市場や、二次調整力・三次調整力などの他のアンシラリーサービスはシミュレーションしていません。これらは将来のバージョンで追加される予定です。
PPA決済計算
PPAのあるプロジェクトについては、発電事業者と需要家の間の決済も計算します。この決済は総収益に影響します。
行使価格の計算
行使価格は、PPAの価格設定スキームによって異なります。以下の式のは基準価格で、PPAの基準価格決定条件で選択した市場とエリアの価格です。
- 固定:固定PPA価格になります。
- インフレに応じて上昇:PPA契約の最初の年のPPA価格に等しく、シナリオのインフレ仮定に従って毎年複利で増加します。
- 最低価格保証:に等しく、最低価格を下回りません。は市場価格ディスカウント(10%なら0.1)です。
- 最高価格保証:に等しく、最低価格と最高価格の範囲内に収まります。
- 最低&最高価格保証:割引なしのに等しく、最低価格と最高価格の範囲内に収まります。
変動型をオンにすると、固定価格、最低価格と最高価格、市場価格ディスカウントを契約年ごとに変わるスケジュールで指定できます。
決済額の計算
PPAには、主にフィジカルおよびバーチャルの2つのタイプがあります。フィジカルPPA(オフサイトPPA)の場合、PPA期間中に発電所で発電した電力は市場で取引されないため、その期間の取引シミュレーションは実行しません。需要家は、メーターでの正味の送電量(出力抑制と蓄電池運転を反映した送電量から受電量を差し引いた値)を購入し、行使価格で支払います。これが発電事業者の主な収益となります。PPA期間中、蓄電池は市場価格ではなく行使価格に対して最適化されます。
フィジカルかバーチャルかにかかわらず、PPA期間中は非化石証書の収益を計上しません。
バーチャルPPAの場合、電力は市場で販売され、後で計算する決済額により、市場の状況に応じて発電事業者と需要家の間で資金が移動することがあります。この場合の決済額は、次のように計算されます。
は、需要家が発電事業者に支払うkWhあたりの価格です(値が負の場合は発電事業者が需要家に支払います)。は基準価格です。決済の対象量は、メーターでの正味の送電量です。
あるコマで = 4.5円/kWh、正味の送電量が400 kWhの場合、需要家はそのコマについて発電事業者に1,800円を支払います。
費用計算
各プロジェクトの資本支出(CAPEX)と運用支出(OPEX)を計算します。CAPEXは、プロジェクトに入力したCAPEXの支払いに従います。
OPEX費用は、プロジェクトのOPEX設定で登録した項目です。組み込みの項目はなく、各項目で次の内容を個別に設定します。
- 勘定項目: O&M、アセットマネジメント、土地リース、保険、ハードウェア交換、資産除去積立、インバランス費用などの費用区分。
- タイミング: 一回限りか定期的か。開始日と終了日は正確な日付またはプロジェクトのマイルストーンからの相対日付で指定し、頻度は月次または年次で設定します。
- 金額の基準: 絶対額、太陽光DC容量(kW)、パワコンAC容量(kW)、蓄電池容量(kWh)、蓄電池出力(kW)、土地面積あたりの金額、蓄電池放電量またはメーター送電量1kWhあたりの金額、または収益に対する割合。
- 時間変化: 年または月ごとの固定額(円)または割合での変化。
各支払いは、支払日が属する月に計上されます。
蓄電池の充電のために系統から購入した電力は費用として計上されます。
プロジェクトのシミュレーションでは、固定資産税、減価償却、法人税は計算しません。固定資産税はSPVの財務諸表で計算されます(SPVの固定資産税設定を参照)。
収益計算
総収益は、市場(スポット取引)からの収益、調整力市場の収益、補助金キャッシュフロー、PPA決済、非化石証書の収益の全ての要素の合計です。非化石証書の収益は、JEPXの非FIT非化石証書市場または相対契約から得られ、系統に送電した太陽光発電量と蓄電池放電量のうち太陽光由来の分が対象です。
総キャッシュフローは、収益から全ての費用を差し引いた値です。
IRR計算
プロジェクトIRRは、日付に基づく内部収益率であるXIRRとして計算し、結果は年率で表されます。各月のキャッシュフローは、その月の収益、CAPEX、OPEX、費用の合計です。税引前かつ借入を考慮しない値で、消費税は含みません。計算はCAPEXが発生する最初の月から開始します。
蓄電池を搭載したプロジェクトの場合、蓄電池IRRも計算します。そのキャッシュフローは、蓄電池のCAPEXと、蓄電池のCOD以降に蓄電池によって得られた収益の合計です。蓄電池による収益は、総収益から、太陽光発電だけで得られたはずの収益(FIT期間中はプロジェクトのFIT単価、それ以外の期間はスポット価格で計算)を差し引いた値です。
シミュレーションで確度レベル(P50、P85、P90、P99)が算出される場合は、結果とIRRをレベルごとに計算します。
IRRを計算できない場合があります。データが欠落しているか不完全である(CAPEX情報がないなど)か、IRRが極端な値(10,000%超)になる場合で、後者は通常、入力データに問題があることを示します。
プロジェクト価値
プロジェクト価値チャートは、各月時点での残りの月次キャッシュフローの正味現在価値を表示します。年間の割引率は目標IRRとして入力し(デフォルトは5%、-30%から100%の範囲)、同等の月次レートに換算されます。シミュレーションではLCOEは計算しません。